20210411 「精神世界」棚

本屋で物色していると、「コロナウイルスはただの風邪!」「ワクチンは打つな!」といった内容が表紙に掲げられている本が平積みされていたのを見かけた。なるほど、ただの風邪と思っているのだったらワクチンを打つ必要も薄いよな、とその主張の流れを理解したけれど、さすがにコロナウイルスはただの風邪ではない。そういった主張の本が数冊並べられていたので、ここは何のジャンルの棚なのだろうと確認したら「精神世界」という分類名になっている。よく見るとその棚には天災が人災であるなど、怪しげな陰謀論の本などもまとめられていて、この一体の本に科学的な根拠がなさそうなことは伝わる。そういった本をまとめて陳列することで「こういったジャンルの思想ですよ」ということを暗に客に伝えるようにしているのだろう。本屋は本を排除しない代わりにカテゴライズでメッセージを伝える。

ただ陰謀論やオカルトの棚に「精神世界」と名前が付いているのは、改めて考えると嫌だ。人間の精神の奥底ではそういった非科学的なことが正しいと思っている、と言われている気がする。「世間一般の常識ではなく、本当は直感的に自分が正しいと感じたことこそが『正しい』のではないか?」という考えに囚われるのが陰謀論やオカルトの始まりだから、「精神世界」という名前が付いてしまうのかもしれない。しかし実際には自分の中にある大部分の考えは世間一般の常識と一致しているはずで、世の中の陰謀論やオカルトを全て混ぜ込んだものが、世の中の人たちの精神世界ではないだろう。棚の一部分は含まれているだろうけれど、このカオスな棚全体を精神世界と名付けられてしまうと、それは違うんじゃないかとは思ってしまう。

だったらどういった棚の名前がいいのか、と言われると難しい。一昔前は「サブカル」というカテゴライズがその役割を果たしていた気がするけれど。